PERIDOTS TOUR 2010 “MY MIND WANDERS”@大阪(REPORT)

1st Full Album「MY MIND WANDERS」をリリースし、満を持してのツアー。大阪、名古屋、東京の日程だけど、関西のお客さんは本当にあったかいので、初日が大阪ってのは弾みがついていいんじゃないかと個人的には思うんだ。SOLD OUTとはいかないまでも、たくさんのお客さんがperidotsを待っている。
開演すると、バンドメンバーとともに高橋さん登場。服装は「オールライト」PVと同じ白シャツに黒いタイ。
1曲目は一番新しい曲、「Life」。何の根拠もなくアルバム1曲目の「My Mind Wanders」から始まるんじゃないかと思っていたので意表をつかれた。しかし、イントロのFIREさんのベース、弦をタッピングして弾くのがすさまじくて目が釘付け。バンドの音に合わせて高橋さんが歌い始めて、何が驚いたって、CDの音の再現性。ツアー前に「いい意味でCDそのまんまのライブ」みたいなことを高橋さんが話してたけど、まさにその通り。レコーディングメンバーがツアーサポートしてるってのはあるけど、それだけじゃないでしょ? 逆にいえば、ライブをそのままパッケージしたような、ありのままのperidotsの名刺代わりとなるアルバムができたということでもあり。その全部が嬉しくて、すでにこの時点で感極まってしまった。伸びやかできれいな高音は鳥がゆっくりと大空を滑空していくようでもあり、そのまま昇天してしまうようでもあり、儚さや力強さ、いろんな表情をみせる。そして高橋さんがエレキギター弾くのって珍しい! アウトロで光太郎さんとFIREさんが高橋さんの背後に歩み寄り、二人向かい合わせでセッションしてる光景が嬉しくて(さらにその後ろには中畑さん)、「このメンバーがいてくれてよかった」と心から思った瞬間。
続く「My Mind Wanders」はテンション高く。途中高橋さんがギターを弾かずに、左手でギターのネックを、右手でマイクスタンドを握りしめて歌う姿、その夢中な感じにニヤリ。
「今日はお祝いです! 楽しんでいってください!」と両手を高く掲げる高橋さんに、盛大な拍手が。本当に皆この日をずっと待っていたんだよね。
エレキをアコギに持ちかえて「オールライト」「Nothing Is Coming」と、ガツン!とバンドサウンドを立て続けに。「Nothing Is Coming」は光太郎さんのエレキギターがかっこいい、それに尽きます! そういえば、高橋さんって獣が吠えるように歌う時があるよね。草野マサムネ氏が「荒野にたたずむ一匹の狼」って評したのは、まさにそうだな。
ここで高橋さんの紹介でkey.村田さん登場。全員揃ったところで「Follow the stars(in your heart)」。鍵盤が入ると華やいで、夜空一面の星空を思い描いてしまう。本当にこの曲大好きなので、次のアルバムには収録されたらいいな。peridotsにはまだまだすてきな曲がたくさんあるんだ。
そういえばMCで「peridotsの客層変わった?」っていってたけど、確かに以前より男性が増えた気はする。今までどこに隠れていたのか、それとも新しいファンかな。着実にperidotsの音楽が広がっている証拠。
「“shoulder"」は不意打ちでびっくり。いやいや、今日は「集大成のライブ」だから演っても全然おかしくはないのだ。高橋さんの歌声に寄り添う光太郎さん、FIREさんのコーラスが優しい。中畑さんはコーラスはしないんだけど、ずっと楽しそうに歌いながら叩いてて、その姿も嬉しいんだ。
そしてここからはkey.村田さんと二人ペリコーナー。「歌は常に雄弁である」から「急に石が飛んできて/Rapsoody Falls/罪」「夜のページ」へと。「歌は常に雄弁である」が聴けて本望です(他の会場ではやらなかったので尚更)。「急に石が飛んできて」のアルペジオから「Rapsoody Falls」に移るとき、高橋さんがギターのネックに挟んでたピックを抜くあの「間」にいつも見とれてしまいます。そして「夜のページ」はやっぱり特別。ギターを置いてスタンドマイクに向かう。最初は手を後ろでつないでいるんだけど、いつの間にかその手は自然と離れ、胸の前で強く握り合わされ、目を閉じて歌っている。気がつけば周りの人の存在を忘れ、そこには自分しかないような、別の時空にいるような錯覚を覚える。一番前で観てる人も、一番後ろで聴いている人も、ステージとの距離なんて関係ない。祈るようで、子守歌のごとく包み込むようで、でもそこはかとない寂しさもあり、なおかつ美しい...。それぞれの心にperidotsの歌が迫りくるように深く響いてくる。
しんとした空気の中、他のバンドメンバーがステージに戻ってくる。村田さんの鍵盤から始まる「Last One」。私甘くみてました、この曲のディープさを。高橋さん、横を向いてうつむくように体を折り曲げ、胸の前でリズムに合わせてハンドクラップ。そしてマイクスタンドを握り締めて歌う。伏し目がちな視線で妖しい表情を浮かべたり、頭をバッと後ろにそらしたり、マイクをぐっと引き寄せたり、曲のブレイクとか、決めの連続で、高橋さんがすごく入り込んでるのがわかる。ダークサイドというか、匂いたつような色気にくらっとくる。peridotsには私の知らない顔がまだまだあるんだな。peridotsは高橋さんのソロユニットだけど、peridotsバンドがとっくに叶っていたらこんなフロントマンになってたんだろうな、と垣間見えた気がした。これからもいろんな表情をみせてほしい。
そしてそのまま「Head To Toe」へ。ドラムのリズムとベースラインがゆらゆら気持ちいい。光太郎さんが青い光を放つ物をギターの弦に当てて弾いてるのが気になるー(あとで調べたら「E-BOW(electricbow)」というエフェクターでした)。
しかし「雄弁〜」から「Head to Toe」の一連の流れはあっという間で、すっかり見入ってしまった。ようやく一息ついたMCでの一言は、高橋さんから皆への粋なプレゼント。「peridotsを見捨てないでいてくれた皆さんに捧げます」という前置きからの「ライフワーク」。「僕らに拍手を 皆にも拍手を」。こんなにもperidotsの、また見守ってきたファンの気持ちを代弁するって曲ってない。まるでこの時のために作られたかのよう。アウトロをじっくりゆったり堪能したかったなあという物足りなさも若干ありつつ(我ながら欲張り)、これが今のperidotsの「ライフワーク」なんだね。
「Tokyo to Tokyo」は中畑さんのカウントで始まる時点からもう皆楽しそうで、みてるこっちもわくわくした気持ちが伝染してくるような。個人的な意見だけど、peridotsの曲はシリアスなのが多くて、これみたいにただ単純に「楽しい」曲って貴重な気がして。きゅっと体に力が入っていたのがふとゆるむような、大好きな曲。
「今日は『労働』の本来の姿をお見せします」という高橋さんのMCに「?」と思いつつ、始まった「労働」は、いつものアルペジオから始まるのとは違ってた。アコギから始まるのは同じだけど、スネアがずっと「タカタカタカタカ」鳴り続ける。光太郎さんがどなたかとtwitterで会話しているのをおみかけしたのだけれど、この「労働」は、光太郎さんと高橋さんが小さなスタジオで一番最初に作ったバージョンなんだそう。このメンバーだからこそ実現した復活アレンジを聴かせてもらえて嬉しいね。
そして「メトロ」が大好きだー!と声を大にしていいたい。光太郎さんのコーラスが合わさるところもすごく好き。
「みんなが一緒に歌ってるのをみて『アルバムを出したんだ』と実感しました」という高橋さんのMC、そうだよー。みんな待ってたんだよー。そして「これからは皆さんをやきもきさせないように、アーティストとして普通の活動をしていきたいと思っています!」と高らかに宣言してくれた時、これまでのすべてが報われたような気がした。お客さんの拍手があたかかった。音楽業界の難しいことはわからないけど、これまでのperidotsの活動が「普通」じゃなかったことはわかる。何で「普通」にやらないのか、やれないのか、みえなくて勝手に心配したり不安になったりもした。何にも脅かされず、ただ単純に音源が出るのを待ち遠しく思ったり、晴れ晴れとした気持ちでライブに行くような日々をただただ待っていたんだ。
「最後の曲です」という高橋さんにお客さんから「えーーー!!」っと叫ぶ声。いつもと違いMCが少ないからか、本当にあっという間に時が過ぎたように感じるよー。すると「アンコールがありますから」って。「こういうと受けるんです」って(笑)。
アルバム最後の曲「どこへ」の、力強くどこまでも伸びていく高橋さんの歌声。終わってしまうのが名残惜しいよー(終わらないんだけど)。


アンコールを求める拍手の後に高橋さんと村田さんが登場。鍵盤と高橋さんのハンドマイク、ということは...「eyes」だ。高橋さんが歌っているとき、最初は手を後ろにもっていってるんだけど(発声しやすいのだろうか?)、歌が進むにつれて、神様とかそういう類のものが体に降りてきたんじゃないか?と思うくらい。吸い込まれるようなすごい磁場。体をくの字に折り曲げて、歌声に魂を込めるような。
次の曲は以前にも聴いたことのある新曲...「andante」。明るい日差しの射すような曲。歌詞はこんな感じだったと思う。
「ずっと探してきたんだ ずっと今日まで」「これが僕の これが僕の魔法 めちゃくちゃになってほしい」「誰が何ていったって 構わないのさ 説得力や確かさがなくても 君にはわかってほしい」
MCでも言葉で伝えてくれるけど、こんな歌詞をメロディにのせて、高らかに、楽しそうに歌って聴かせてくれる方が雄弁に伝わることもあるよね。本当に「歌は常に雄弁である」って名言だな!(笑) peridotsの「これから」が見えなくて、漠然とした不安な時も、ライブで直接その歌を聴いてる時だけは気持ちが和らいだんだ。 この曲しかり、「My Mind Wanders」しかり、要所要所で披露された新曲で伝えてくれたこと、ちゃんと皆に届いてるよ。
そして本当のラストの曲が「リアカー」。この曲が最後というのが嬉しかった。「見捨てずに全部ひっくるめて連れていこう」という心意気や覚悟みたいなものを勝手に感じ取ってしまったからかな。

アンコールが終わっても拍手がやまなくて。ダブルアンコールを求めるっていうよりも、ただの賞賛としてのあたたかな拍手。それは場内アナウンスが流れても止まらず、ステージの幕が閉められてしまうまで続いた。お客さんもいいお客さん。
今回のライブは無駄が削ぎ落とされ、研ぎすまされていて、まさに「ソリッド」。MCは最小限で、だからこそ言葉ひとつひとつがとても大切なものとして届いたと思う。ゆったり沢山話してくれるのも勿論嬉しいのだけど、そうじゃなかったところにもツアーに対する気合いを感じた。
本当にこの日が迎えられたことが嬉しい。ただそれに尽きます。これからもperidotsの活動をみつめていきたいです。皆もさあ、ご一緒に。


【yrrtnhr】